小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金の違い

集客なら小規模事業者持続化補助金、業務効率化やAI導入ならデジタル化・AI導入補助金。2026年5月15日時点の公式情報をもとに、違いと選び方を整理します。

小規模事業者や中小企業が最初に検討しやすい補助金として、よく比較されるのが 小規模事業者持続化補助金 と、旧IT導入補助金である デジタル化・AI導入補助金 です。

この2つはどちらも有力ですが、制度の設計思想はかなり違います。

大づかみに言えば、次のように考えると判断しやすくなります。

今の課題先に検討しやすい制度
新しいお客様を増やしたい小規模事業者持続化補助金
手作業を減らしたい、ITやAIを入れたいデジタル化・AI導入補助金

ただし、この整理には1つだけ補足が必要です。小規模事業者持続化補助金は「販路開拓等」が中心ですが、公式の公募要領では 販路開拓等とあわせて行う業務効率化の取組 も対象に含まれます。つまり、完全に「集客専用」の補助金というわけではありません。

この記事では、2026年5月15日時点で確認できる公式情報をもとに、制度の違いを実務目線で整理します。

この記事は制度比較のための概説です。申請可否、対象経費、締切、特例、加点、登録ITツールの範囲は更新されるため、実際に申請する際は必ず最新の公募要領と事務局案内を確認してください。


まず結論

最初に結論をまとめると、比較の軸はかなりシンプルです。

比較項目小規模事業者持続化補助金デジタル化・AI導入補助金
主な目的販路開拓、売上拡大、認知獲得労働生産性向上、業務効率化、DX
使い道のイメージチラシ、LP、広告、展示会、看板、パンフレット会計、受発注、顧客管理、予約管理、販売管理などのITツール
対象者のイメージ小規模事業者が中心中小企業・小規模事業者等
申請の進め方経営計画と販路開拓計画を自社で説明する登録されたITツールとIT導入支援事業者を前提に進める
ひとことで言うともっと売るための補助金もっと速く、正確に回すための補助金

言い換えると、小規模事業者持続化補助金は 「売上を作りにいく投資」 に向いています。
デジタル化・AI導入補助金は 「日々の作業を減らす投資」 に向いています。


2026年5月15日時点の公式状況

比較の前に、今どういう状態かを公式情報で押さえておくと判断しやすくなります。

制度2026年5月15日時点の確認状況
小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>第19回公募は2026年4月30日で終了。第20回公募要領は「現在調整中」と案内
デジタル化・AI導入補助金20262026年3月10日に公募要領公開。申請受付は2026年3月30日開始。通常枠の2次締切は2026年6月15日17:00

小規模事業者持続化補助金について、中小企業庁は「持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓等の取組を支援する」と説明しています。(中小企業庁)

デジタル化・AI導入補助金について、中小企業庁は「AIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する」と説明し、令和7年度補正予算事業から「旧:IT導入補助金」からの名称変更を案内しています。(中小企業庁)


小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を作り、その計画に基づいて行う 販路開拓等の取組 を支援する制度です。

第19回公募要領では、補助率は原則2/3、補助上限は50万円で、インボイス特例や賃金引上げ特例による上乗せが示されていました。(第19回公募要領)

向いている場面

やりたいこと
新規顧客を増やしたい地域向け広告、LP制作、看板、チラシ
新サービスを知ってもらいたいパンフレット、展示会、商談会
既存顧客以外に広げたい新しい販路の開拓、導線改善

実務上の大事なポイント

この制度は「ホームページを作れば使える補助金」ではありません。重要なのは、その支出が どう販路開拓につながるか を説明することです。

また、公式要領では、補助対象事業を「販路開拓等のための取組」または「販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組」としています。(第19回公募要領)

つまり、持続化補助金は「集客寄り」と整理するのが実務上わかりやすい一方で、制度上は 販路開拓とセットの業務効率化 も対象になり得ます。この点は、単純に「販促専用」と覚えてしまわないほうが安全です。

誰が使いやすいか

この制度は名前のとおり、小規模事業者向けです。中小企業庁は、小規模企業者について、おおむね 従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下) と案内しています。(中小企業庁 FAQ)

そのため、従業員規模がすでに大きい会社では、最初から別制度のほうが合う場合があります。


デジタル化・AI導入補助金とは

デジタル化・AI導入補助金は、旧IT導入補助金の後継にあたる制度です。2026年の公募では、AIを含むITツールの導入を通じた労働生産性向上を支援するとされています。(中小企業庁)

この記事では、比較しやすいように 通常枠 を中心に見ます。

通常枠の案内ページでは、補助率は 1/2以内 または要件に応じて 2/3以内、補助額は 5万円以上150万円未満 または 150万円以上450万円以下 とされています。(事務局 通常枠ページ)

向いている場面

手作業が多い業務導入候補になりやすいITツールの例
会計処理会計ソフト、請求管理
受発注や在庫管理販売管理、受発注、在庫管理
顧客管理CRM、顧客台帳の一元化
予約や受付予約管理システム、受付管理
社内事務人事、給与、教育訓練、統合業務のツール

実務上の大事なポイント

この制度では、何でも自由に導入できるわけではありません。事務局は、補助対象となるITツールについて、IT導入支援事業者が登録申請を行い、承認されたITツールである必要がある と案内しています。登録されていないITツールは交付申請できない、と明記されています。(ITツール登録申請ページ)

さらに、通常枠の案内では、申請するソフトウェアは 1種類以上の業務プロセスを持つことが必要で、汎用プロセスのみは不可 とされています。(事務局 通常枠ページ)

このため、「AIを使いたいから何か導入する」という考え方だけでは弱く、実務では次のように整理するのが大切です。

  • どの業務を減らしたいのか
  • そのツールは登録ITツールか
  • そのベンダーはIT導入支援事業者か
  • そのツールが業務プロセス改善として説明できるか

制度名に「AI」が入ったことでAI活用への関心は高まりましたが、申請上はあくまで 登録されたITツールとしての適格性 が前提です。


2つの補助金の本質的な違い

制度の違いを一度、実務目線で並べるとこうなります。

比較軸小規模事業者持続化補助金デジタル化・AI導入補助金
何を評価されるか販路開拓の計画と筋の良さ導入ツールと生産性向上の妥当性
申請の中心自社の経営計画、販路開拓ストーリー登録ITツール、登録ベンダー、導入計画
相談先商工会・商工会議所IT導入支援事業者、事務局
よくある誤解ホームページ制作補助金だと思われがち好きなSaaSやAIを自由に買えると思われがち

かなり乱暴に言えば、持続化補助金は 計画の説明力 が重要で、デジタル化・AI導入補助金は 対象ツールと対象ベンダーを正しく選ぶ力 が重要です。


ケース別に見ると、こう分けると判断しやすい

飲食店

課題向いている制度
新規来店を増やしたい小規模事業者持続化補助金
POS、予約、会計を効率化したいデジタル化・AI導入補助金

美容室・整体院・サロン

課題向いている制度
新規顧客向け広告やLPを作りたい小規模事業者持続化補助金
予約管理や顧客管理を整えたいデジタル化・AI導入補助金

士業・コンサル・BtoBサービス

課題向いている制度
新サービスを知ってもらいたい小規模事業者持続化補助金
顧客管理、会計、業務フローを整えたいデジタル化・AI導入補助金

小売・EC

課題向いている制度
集客や販促を強化したい小規模事業者持続化補助金
在庫、受注、販売管理を整えたいデジタル化・AI導入補助金

海外顧客や外国人顧客を増やしたい事業者

課題向いている制度
多言語LP、パンフレット、集客導線を作りたい小規模事業者持続化補助金
問い合わせ処理、顧客管理、社内文書処理を効率化したいデジタル化・AI導入補助金

このケースでは、外に向けて売る活動社内で処理する仕組み を分けて考えると、かなり整理しやすくなります。


迷ったときの選び方

  1. まず、課題が『集客不足』か『作業負担』かを切り分ける

    新規顧客が足りないのか、今ある仕事を回すのに時間がかかりすぎているのかで、優先する制度は変わります。売上を増やすための打ち手なら持続化補助金、事務や現場のムダを減らす打ち手ならデジタル化・AI導入補助金が候補になります。

  2. 次に、使いたい経費が『販促費』か『ITツール費』かを見る

    チラシ、LP、広告、展示会、看板のような販路開拓費が中心なら持続化補助金が合いやすいです。会計、受発注、顧客管理、予約管理などの登録ITツールが中心なら、デジタル化・AI導入補助金の通常枠を先に確認したほうが早いです。

  3. 最後に、申請前提条件を確認する

    持続化補助金なら小規模事業者要件と商工会・商工会議所との連携、デジタル化・AI導入補助金なら登録ITツールとIT導入支援事業者の確認が重要です。どちらも交付決定前の発注や契約に注意し、資金繰りも先に確認しておきます。


申請のしやすさは、どちらが上か

「どちらが簡単か」は、一概には言えません。簡単さの種類が違うからです。

観点小規模事業者持続化補助金デジタル化・AI導入補助金
制度の理解目的は比較的わかりやすい枠や登録ITツールの理解が必要
書類作成経営計画・補助事業計画が重いツール選定とベンダー確認が重い
初心者の進めやすさ商工会・商工会議所へ相談しやすい使いたいツールが決まっていれば進めやすい

持続化補助金では、商工会・商工会議所の支援を受けながら進めることが前提です。申請ページでも、電子申請に加えて事業支援計画書(様式4)の作成依頼が必要と案内されています。(事務局申請ページ)

一方、デジタル化・AI導入補助金は、すでに導入したいツールが決まっていて、そのツールが登録済みであるなら、話は進めやすくなります。


補助金選びでよくある失敗

1. 補助金額だけで選ぶ

上限額が大きく見えても、自社の課題とずれていれば意味がありません。大事なのは「その投資が売上か生産性のどちらに効くのか」です。

2. 持続化補助金をホームページ制作補助金だと思う

ウェブサイト関連費が対象になることはありますが、本質は販路開拓です。サイト制作そのものではなく、どう集客や売上につながるか が問われます。

3. デジタル化・AI導入補助金を、好きなAIツールを買える制度だと思う

登録されていないITツールは申請できません。さらに、通常枠では汎用プロセスのみのソフトウェアは不可です。先にツールの登録状況を確認しないと、検討自体が空振りになります。

4. 交付決定前に契約・発注してしまう

どちらの制度でも、契約や支払いのタイミングは要注意です。持続化補助金の公募要領でも、補助金は後払いで自己負担が必要と明記されています。(第19回公募要領)

5. 目的が曖昧なまま申請する

「業務効率化したい」「ホームページを作りたい」だけでは弱いです。どの業務を何時間減らすのか、どの顧客層に何を売りたいのかまで言葉にしたほうが通りやすくなります。


キャッシュフローは必ず先に見る

補助金は、先にもらえるお金ではありません。一般に、採択、交付決定、発注、実施、実績報告を経て、後から補助金が支払われます。

そのため、実務では「補助率が2/3だから自己負担は1/3だけ用意すればいい」とは限りません。いったん全額を立て替えられるか、補助金が入るまで資金繰りに耐えられるかを先に確認する必要があります。

この点は、小さい会社ほど見落としやすいので注意が必要です。


Dawnlightで相性がよいのはどこか

このテーマでは、まず Dawnlight 補助金診断 が自然な入口です。どの制度が候補になるかを先に整理し、事業構想のたたき台を作ってから、必要に応じて行政書士や支援事業者へ引き継ぐ流れと相性があります。

特に、次のような場面では使いやすいです。

  • 持続化補助金とデジタル化・AI導入補助金のどちらを先に見るべきか迷っている
  • DX関連の補助金を優先して整理したい
  • 申請前に事業計画の論点をまとめたい

まとめ

2026年5月15日時点での整理としては、次の理解が実務的です。

自社の課題先に検討しやすい制度
もっとお客様を増やしたい小規模事業者持続化補助金
広告、LP、チラシ、展示会で販路を広げたい小規模事業者持続化補助金
業務時間を減らしたいデジタル化・AI導入補助金
会計、受発注、顧客管理、予約管理を整えたいデジタル化・AI導入補助金
海外・外国人顧客対応を進めたい外向け施策は持続化、社内処理はデジタル化・AI導入で分けて考える

補助金選びで最も大切なのは、「どの制度が有名か」ではなく、「自社は今、売上を増やしたいのか、作業負担を減らしたいのか」を先に決めることです。

その問いに答えられると、持続化補助金を先に見るべきか、旧IT導入補助金であるデジタル化・AI導入補助金を先に見るべきかが、かなりはっきりします。


参考にした公式情報

Dawnlight 補助金診断

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蘇 軾文(スー・シーウェン)
蘇 軾文(スー・シーウェン) ドーンライト合同会社 代表

台湾出身、東京拠点。16年以上のソフトウェア開発経験を持ち、東証上場のサイバーセキュリティ企業でCTOを務める。その後、中小企業向けAIツールの開発・提供を目的にドーンライト合同会社を設立。現在は補助金診断、AI面接、採用マッチングなど5つのサービスを開発中。「現場で本当に使えるAI」を中小企業に届けることをミッションとしている。